「夢のエネルギー」の正体・小出裕章さん講演報告

先日この日記でご案内し、
6月20日に開催したエコトークカフェに、
京都大学原子炉実験所の小出裕章さんをお招きしました。
小出さん
最近はあちらこちらで講演活動に引っ張りだこで、
開催前の1ヶ月ほどメールで色々と打ち合わせしている間も、
東北の方に行かれたり北海道に行かれたり、お忙しくされているようです。

そんな中で、丁寧に講演資料を準備して下さり、
当日のお話もパワーポイントを使いながら驚くほどに分かりやすかったです。

ウランの核分裂反応の発見から始まり、
アメリカの原爆製造計画である「マンハッタン計画」。
その後の広島・長崎への原爆投下、
戦後その恐るべき破壊力を未来の新たなエネルギーにしようとした人々の「夢」。

新たな「夢のエネルギー源」としての期待が日本を覆っていた戦後のある時期に、
中学時代を過ごし、その「夢のエネルギー」の開発に尽くそうと、
原子力研究の道を歩み始めたのが小出さんなのでした。

その「夢」への期待は、
戦前から戦中戦後と石油が近いうちに枯渇する、という恐怖から生まれたものです。
石油への依存のために、日本は戦争を拡大し、そして国を滅ぼしました。
エネルギー源を確保することは、やはり切実な問題なのです。

しかし、原子力発電の原料となるウランは、
埋蔵量としては石油の数分の一、石炭に比べれば数十分の一しかありません。

化石燃料の代わりにウランを使うというのは、
予測可能な未来において、意味が無いのです。

では、どうして国は原子力を進めるのだろう?
というのが、次のテーマです。

その答えは、広島と長崎に落とされたそれぞれの原爆がカギを握ります。

難しいところは省きますが、
原爆を作るには、「ウラン濃縮」が必要です。
「ウラン」と呼ばれる元素の中にわずか0.7%だけ存在する「核分裂性ウラン」を、
90%以上の濃度に高めることです。

大変なエネルギーを使って無駄が多いため、今度は残りの99.3%を、
「核分裂性のプルトニウム」に変換することを、
マンハッタン計画に集まった賢い人達が思い付いたのだそうです。

そして、プルトニウムを作るために必要な物が、
「原子炉」と「再処理工場」であり、「高速増殖炉」を中心とする、
核燃料サイクルなのだとか。

結局、それらの研究成果は、
広島に投下されたウラン原爆と、
長崎に投下されたプルトニウム原爆になります。

「高速増殖炉」と言えば、福井県の「もんじゅ」、
「再処理工場」と言えば青森県の六ヶ所村。
日本には全てが揃っています。

トラブルを起こして15年間も停止していた「もんじゅ」を、
もう一度動かしたのには大きな理由があるのだとか。

原子力発電所で生みだされるプルトニウムは、
プルトニウム原爆の原料となる「核分裂性のプルトニウム」を、
70%程しか含んでいないのです。
けれど、「高速増殖炉」を動かすことができれば、
「核分裂性のプルトニウム」の割合が98%というプルトニウムを作れるのです。

この辺で小出さんは慎重に言葉を選んでいる様子でもありましたが、
日本政府は、核武装を目指しているんだ、ということがよく分かりました。

そして、それこそが、「もんじゅ」にこだわる最大の理由で、
1キロワットの電気も作らずに、1兆円を超えるお金をつぎ込んでいるのは、
たった1基でも「高速増殖炉」ができれば、
核兵器を作るには十分な量のプルトニウムができるからなのです。

さて、原子力が抱える危険についてなのですが、
小出さんは、チェルノブイリ原発事故のことも紹介しながら、
上関で原発事故が起こった場合のシミュレーションもして下さいました。

事故が起こったチェルノブイリ4号炉の出力は100万キロワット。
ほぼ2年間運転して事故を起こし、
その時には広島原発2600発分の死の灰を抱えていたのだとか。
事故で炉心に蓄えられていたセシウム137という物質の3~4割、
広島原爆800発分が放出、日本の本州の6割に当たる14万5000平方キロメートルが、
「放射線管理区域」と呼ばれる位の汚染状況となりました。
「放射線管理区域」とは、放射線業務従事者が
仕事上どうしても入らなければならない時だけに限って入る場所だそうです。

上関で予定されている原発は137万3000キロワットのものが2基。
これがチェルノブイリ級の事故を起こした時に、
風下に置かれた地域では、半径7.7kmの範囲内で、99%の人が死ぬことになるそうです。
小出さんに頂いた資料によると、祝島はすっぽりとその円の中に入っているのです。

急性の死者だけではなく、晩発性の癌の死者はもっと深刻です。
風向きによっては、関西圏と東京も風下となり、
その場合は120万人の死者が予想されます。

別の角度で、広島が風下に位置した場合には、
広島で25万人、全体で約50万人の死者が発生する、という予測なのだそうです。

日本列島どころか、朝鮮半島や中国を含めて、人の住めない環境が広がることになります。

上関原発が建設されれば、毎年広島原爆3000発分の死の灰が蓄積されるのですが、
事故を起こさなくても、日常的に海に放出される温排水は、1秒間に192トン。
近畿一の大河淀川の平均流量は1秒間に150トンです。
周りよりも7℃高く、放射能以外にも塩素なども含まれた水が、大量に流れ出ます。

7℃高い水温について、小出さんはこんなたとえ話をして下さいました。

「例えば皆さんがお風呂に入ることを思い浮かべて下さい」
「熱いお湯、ぬるいお湯、皆さんの好みはそれぞれでしょうけど、
いつもの温度から7℃高いお湯に浸かることを考えてみてください」
「入れる人はほとんどいないと思います」
「ましてやこの海に住んでる生き物は、
ここにお風呂に入りに来てるわけじゃないんですよ」
「ここで暮らしている生き物が、生きて行けるはずがありません」

ちなみに、100万キロワットの発電する原発ですが、
原子炉の中では300万キロワットの熱が出ているそうです。
残りの200万キロワットは海に捨てられているのだとか。

「『原子力発電所』ではなく、『海温め装置』」ということになります。
水温め装置



そして実は、小出さんによると、原子力発電は今すぐやめても困らないのです。

日本の電力は現在、約30%が原子力でまかなわれています。

しかし、発電所の設備の能力で言うと、全体の18%なのです。

今ある火力発電所をわざわざ停止させて、原子力発電所を使っています。
現在、火力発電所の設備の能力の48%しか使っておらず、
今原子力発電を停止して、すべて火力発電に振り替えても、
なお火力発電所の設備利用率は70%位なのです。

それほど電力設備は余っているのです。

でも、電気事業法で電力会社は利潤を保証されており、
電力会社の利潤は資産に比例するように設定されるため、
沢山資産(発電所)を持つと、それだけ儲かる仕組みになっているのです。

そして僕達は世界一高い電気料金を、文句も言わずに支払っている、
ということになるのだとか。

小出さんのお話の中で、
「『高速増殖炉はすぐにでもできる』と言っている学者もいますが、
そういう人は全員刑務所に入れるべきです」
という発言もありました。

「夢のエネルギー」の実用化のため、
原子力の世界に足を踏み入れた若き日の希望と、
その後の失望の落差はどれほどのものだっただろう。

講演の端々で、その無念さがにじみ出て来ているようでした。

それでも原子力の世界から離れるのではなく、
危険性を多くの人に知ってもらい、いつか発電所を停止するために、
その原子力の知識を活用しよう、と活動されるそのエネルギーは、
どこから来るのだろうか、とも思います。

かつて自ら切り拓こうとした未来を、
間違いだったと分かったからと言って、
自らの手で閉じようとする決意と勇気って、
どんなものなんだろうと思います。

小出さんに非難される、原子力の世界に君臨する大物達には、
多分、そんな痛烈な方向転換をする勇気が無かったのだろうなと思うのです。
とにかくそこにすがりつくしかない、
存在する限り自分の地位も暮らしもとりあえず安泰なわけなのですから。

その部分は、小出さんとは全然違う規模ですが、
僕も会社員じゃなく、自分の仕事、暮らし方を作ろうと方向転換した時の気持ちと、
あるいは共通する何かがあるような気がします。

勝手にそんな気がするだけなのですが、
そういう小出さんの心の底の方に触れたような気がして、
勝手に共感する気持ちが芽生えて、
そしてイベント開催前からの小出さんの細やかな心遣いに触れて、
すっかり小出さんのことが好きになったのでした。
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genre : ライフ

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春風~はるかぜ~

Author:春風~はるかぜ~
春風珈琲。コーヒー好き。コーヒーが生まれる場所を見たくてエクアドルのコーヒー生産者に会いに行き、ご近所の生産者のことが気になり始める。フェアトレードって途上国だけのことなのか。色んなところでコーヒーを淹れて、ゆるやかな時間を作ります。出会った人達の商品を紹介中。歴史と京都と町家も好きで、今熊野で町家暮らし。

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